ナズナ記

日記

避難

余談

前回の記事から早2年、このたった二年でもいろいろあったものだと思いを馳せる今日この頃。Twitterがイーロンマスク氏に買収された影響でTweet Deckが有料になってしまった。ということで、いい機会なのでしばらくこちらに移住することにした。

前回の続き

前回。

背景として、最近は3Dプリンタを導入して自作キーボードを作っていたり、小物を作っていたりしている。このあたりの話は近いうちにまとめておきたい。

キーボードのアーキテクチャ

完全にオリジナル設計の立体キーボードを作ろうということで、まずは設計コンセプトを考える。

立体キーボードは大体Dactyl Keyboardで、独自に設計したものは少ない印象。まあ、Dactyl Keyboardは自分に合わせた設計を自動で行うツールがあるうえ、そのツールがかなり自由度が高い。そのため、わざわざ自分で設計する労力に比べてリターンが少ないのが理由だと思っている。*1

先日完成したDactyl Keyboardと呼ばれている立体キーボード

キー配置をオリジナルにするくらいならそのツールで済んでしまうので、この手の立体キーボードではあまり気にされない打鍵感に注目してみる。

ということで、立体キーボードにGasket Mountを適用した設計にしたい。

keychron.jpのブログ「カスタムメカニカルキーボードの選び方は?」より引用。

一般的に、キーボードは上図のような構造となっている。キースイッチが受ける衝撃はPlate、Caseを通してすべて直接机に伝達される。そのため、キースイッチに与えた衝撃はすべて指に帰ってくるので「硬い」と言われている。

一方、比較的高級な一部のキーボードは下図のような構造が多い。*2

keychron.jpのブログ「カスタムメカニカルキーボードの選び方は?」より引用。

キースイッチが固定されているPlateがGasketを通してCaseにつながっている。このGasketはシリコンのような緩衝効果のある材料が用いられる。ゆえに、キースイッチの衝撃はGarketで減衰される。つまり「柔らかい」キーボードになる。

「柔らかい」と、

  • 指への衝撃が減衰されるのでタイピング時の負担が軽減される
  • プレートが受ける衝撃が減衰されるので打鍵時の衝撃音が緩和される
  • 柔軟なパーツが入るので多少公差をを大きくとれる

などの利点がる。

一応欠点として、

  • 打鍵した時の振動がほかの指に伝わって不快
  • 機械的強度の低下

がある。

立体キーボードへの ガスケットマウントの適用方法の考察

平面的なキーボードにGasket Mountを適用するのはTop Mountに比べてそこまで設計、製造の難易度は上がらなさそうである。

一方、立体キーボードにGasket Mountを適用するとなると、Gasket、Plate、Caseも立体化するので大幅に設計、製造難易度が上昇する。特に、Gasketが顕著でゴムのような素材を立体的にそれなりの精度で成型するとなると委託になるだろうし、日本では個人相手に請け負ってくれるような業者は少ないだろう。

なので設計で製造難易度を下げる必要がある。一つはラバーバンドのような輪を用いる方法。柔らかいので立体的な構造にも沿ってくれるだろうという予想。しかし、応力を与えた状態を維持させた設計は組み立て難易度が上がるし、劣化につながりそう。

2つ目はPlateを縦方向に分割する方法。パーツ点数は増えるが、分割することで「打鍵した時の振動がほかの指に伝わって不快」という欠点をなくせるし、Gasketの寸法的制約、応力も低減できそうだ。

ということで検証設計してみる。思ったより設計難易度は高くなかった。

3Dプリンタで出力。3Dプリンタを用いた試作設計はサイクルが極めて速く導入して半年たった今でも感動する。

意外と1発でいい感じの試作ができた。キー配置もオリジナルである。

手ごたえはなかなか良い感じで、実際にこれに多少パーツを加えてしまえば使えそうだとも思う。

ただ、オリジナルキー配置がかなり悪く、特に上段キーを打とうとすると、爪が当たり不快であった。また、最も右の列は下ではなく、上にずらしたほうがよさげだ。それを除けばなかなかよさげではあるといった所感。

あとがき

ほかの「ジェネリックDactyl」はどう設計しているのだろうと思って幾つか覗いてみたところ、結局ツールで出力してそれに合わせて設計しなおすというものでがっかりしてしまった。*3

chotyl keyboardのリポジトリに履歴付きFusion360のがあったので拝見。位置合わせして配列を取り込んでいるようす

配列問題は後から考えるとして、まずはミソのガスケットマウントの設計を詰めていきたい。

*1:ある意味、情報化やインターネットの負の側面ともいえる

*2:ここ数年で流行ってきている構造のようだ

*3:それだけDactylがよい設計だと思い知らされたという意味でがっかりした