ナズナ記

日記

本格的に設計してみる

在宅勤務で何かと体調が優れない毎日だったが、ふとできるだけ立って仕事をするようにしたところ、かなり調子が良い。特に下半身に由来する不調がぴたりと止んだ。

ソフト屋さんの間ではスタンディングデスクが持て囃されているが、こう見ると確かに効果的な対策かもしれないと思う。導入を検討しているが、中々手が出しづらいお値段だ。

 

お悩み

kiriwari.hateblo.jp

前回の話。

あれから、おっちらおっちらと完全に独自設計のキーボードを作ろうと色々試している。アイデアが枯渇する感覚を久々に味わったり、モチベーションが消え去ったりと中々苦戦している。

Chortylをベースに独自配列をいくらか試していたが、どうもしっくりこない。というか、平面配列のKeyBall39のほうがタイピング速度が出る始末だ。

冷静になってみれば、立体キーボードというのは制約をキツくする代わりにキーまでの移動距離を少なくするものだ。タイピングは前に打ったキーによって指の角度や力加減が変化する。例えば、H→Oの移動とI→Oの移動ではOの打ち方は著しく変わる。ゆえに、キーボードに対して手の取りうる自由度があまりに低いとタイピング速度は落ちてしまう。特にChortylは手首の動きを一切必要としないレベルの設計であったので、自由度はかなり低いといえる。

イデア

Corne系のキーボードを漁っていたところ、興味深い配列を見つけた。

github.com

キーキャップの配置を小指のみ列方向にオフセットして、さらに傾けている。確かに、握る動作は小指と親指は特に横向きに動くので合理的だ。

これがきっかけで自分の中である程度戦略が固まったので幾らか試作してみた。

戦略

まず、平面配列をベースに特に打ちづらい移動を潰す目的でいくらか立体化させる。自由度を確保するため、あくまでもベースは平面配列。

私はColemak配列ユーザなので、N(K)→I(U)の移動が頻出する割にキー同士が遠く、かなりつらい。いや、QWERTY配列でも頻出するか。あと、?キーは小指の可動域の狭さでそのまま打てない。ということで、Nと?キーは立体化させておいたほうがよいだろう。あと、なんとなくサムキーも。サムキーは両方とも外側を向かせたかったが、移動距離が増えてしまうので片側だけ。うれしい副作用としてサムキーの同時押しがしやすくなった。せっかくなのでComboでReturnあたりを割り当てようかとか。

試作してみる

紙で指の配置をトレースしてCADに起こす。自分だけの、自分のためのワンオフは自作の醍醐味。好きなだけ属性を盛る。どんな我儘でも苦労するのは自分だしね。

配置をCADに起こし終わったら、フィレットでスイッチホールを適当に接続して概念実証用モックアップを印刷する。平面なのもあって、この程度のモックアップは2時間程度で印刷が終わる。安価な3Dプリンタだがすごい速さだ。

手を置いてみると、当然ながら吸い付くようなフィット感。一見完璧なのだが、小指自体の自由度が低いことに起因して、行違いのO(Y)→:(O)をしっかり押せない。半ユニット(9.5 mm)分:(O)キーをO(Y)側に近づけて様子見。?キーが少し近すぎる感じもする。

この小指の角度ならしっかりタイピングできる。フィット感もあまり変わらない。

試作の残骸たち。3回の試作だが、実製作時間はモデリングも併せて12時間もかかっていない。3Dプリンタ様様である。

今度はこのスイッチホールにいい感じのガワをかぶせる。フォームで作ったガワをマージしていくとこんな感じ。

無意味にレンダリングしてみる。ガワは適当に作った割にかなりいい感じだ。

これにキーキャップがついていれば、Ki●kstart●rあたりのクラウドファンディングサイトのイメージ図にあっても違和感がない。

印刷した。積層痕がかなりよさげだ。積層痕を色付きのパテで埋めてみても面白いかもしれない。とはいえ、完全に納得できる設計になったらDMM 3Dプリントサービスあたりに委託するつもりなので、完成形では積層痕は見えなくなってしまう。ちょっと悲しい。

これ売れるのでは。(自画自賛)

まあ「私の」キーボードなのでほかの人の手にはきっと合わない。

こう写真で見るとケース手前の余白が冗長に見える。気がする。

当初はもっとシャープな感じだったのだが、Chorty改変キーボードの試作の際に似たデザインをモデリングしたところ、手のひらに突起が刺さって痛いということがあり、余白をとってでも滑らかにした。ここはちょっと手を加えたい。余白にエンコーダを配置しても面白いかもしれない。

あと、実際に印刷してみて思ったのが、キースイッチが見えないくらいケースを盛ったほうが見た目はやはりすっきりする。盛るとのっぺり感が出てしまうのであまり盛りたくなかったが、もう少し盛ってスイッチが見えないようにしたほうがよさげだ。

基板側のマージは完璧だ。このあたり何か設計上の不具合が出ると思っていたので一発で仕上がったのはかなりうれしい。ソルダー基板だが、本番はホットスワップ基板にしたい。

感触

中々いい流れでアイデアから設計まで落とし込めた。特に、フォーム機能を予め触っておいたのが良かった。デザインの幅が広がり、モチベーションにもつながった。設計や概念がいかにうまくできてもデザイン、要はガワができなければ微妙なものになってしまうので、設計に追従できるデザインツールを習得しておいたほうが良い。

とはいえ、最早当初のコンセプトなど見る影もないが。

設計周りの残件として、マイコンの配置方法どころか配置箇所すら決めていないので、このあたりひと悶着ありそうだ。

余談1

github.com

2列のキーボードなるものがあるようだ。片手だけ見たらマクロパットと思ってしまう。

一見すると変態的だが、確かに文字だけを考えると指ごとに2種類しかとりうる状態がないのは思考的にも、指の負担的にもよさそうだ。ただ、修飾キーやショートカットを考え出すと、レイヤーや手数が多くなりそうで不自由そうだ。2列にまたがる同時押しで手数を削減する試みもあるが、ちょっと気持ち悪い。

ただ、思想的には共感できるので、どうにか妥協点を探して部分的にでも取り入れるのもアリかもしれない。

余談2

github.com

エンプラな3Dプリンタ(プリントサービス)が気軽に利用できるようになってきたので、個人設計の独自キーキャップなるものも界隈では賑わい始めているようだ。このあたりに踏み込むとかなりの地獄を見ることになりそうだ。

 

 

この記事を執筆するにあたって使用したキーボード。

Keyball 39 + Everglide Aqua King V3 Switches Linear 55 g + NP Blue and Gray Keycaps